日本人の人間関係の特殊性

人間関係

日本人の自己というものは、相互の人間関係によって成立している。

西洋人は自己の内面から確固とした個としての自己を確立しているようだが、日本人は、その内面から自己が生まれるのではなく、自己は相互の人間関係から定まる。そのため、自己は、他者が決定する面がある。

この日本人の人間関係の特殊性を、森有正は「二項関係」、吉本隆明は「対幻想」、木村敏は「人と人とのあいだ」として説明している。この関係は、一人称としての自分が三人称としての他者に対する関係ではなく、互い二人称の関係に入って、「あなたのあなた」になるので、息苦しい。

『嫌われる勇気』がベストセラーになったのは、一人称の自己が相手を第三者として接する「こつ」を説いているからだろう。木村敏は、人と人とのあいだは、「それぞれの自己がそこではじめて自己になりうる場所として、自己が自己に対して現前してくる対自として、現存在の〈現〉そのものとして、自らを示してくる」(『自己・あいだ・時間』184頁)。

この立場にたてば、終末期の人との対話は、自己を取り戻す契機を与えるという意味をもつ。そして、このような特質をもつ日本人の自己にとって、死はどのようなものとして受け取られるのだろうか。

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